2010年12月17日金曜日

第23回近畿地区管制・情報懇談会ダイジェスト

主催:社団法人日本航空機操縦士協会(JAPA)西日本支部・八尾空港協議会
日時:2010年11月26日(金) 13:15~17:00
場所:八尾空港総合ビル2階

「主催者あいさつ」
JAPA理事 平山開偉

今年は小型機事故が立て続けに発生している。
小型機の過去の事故を分析すると、パイロットのミスが70%、機材トラブルが13%。
各種講習会を開催し安全運航に役立てたい。


「大阪フライトサービスとコンタクトし安全運航を」
舞洲ヘリポート管理事務所 片山礼二所長

舞洲へリポートは舞洲の北端に位置する。
騒音問題はほとんどない。
北東にヨットハーバーがあり若干飛行制限がある。
南側に盛土がありその方向には出発できない。
滑走路は05/23と10/28の2本がある。着陸は23・10、離陸は05・28と2本の滑走路を使う変則的な運用を行っている。
平成18年度より指定管理者が舞洲へリポートの管理を行っている。
管制官OB4名で対空業務を行っている。他女性1名が訓練中。
担当空域は当初は3NM・3000FTだったが、昨年5NM・1500FTに変更となり、八尾管制圏・大阪PCA・神戸管制圏と近接している。
管理事務所2階で対空業務を実施しており、体を動かさずに首を振るだけで見渡せるのは約200度。東側が良く見えるが、南西側の視界は悪い。状況によっては1人が見て、1人が通信を担当することも。
義務でないにしても、コンタクトする理由はみなさんご存知のとおり(注釈:AIC 002/09「飛行場等の周辺を有視界飛行方式により飛行する場合の安全対策について」参照)。しかし大阪フライトサービスにコンタクトしていない航空機が時々いる。パイロットからどこにヘリが飛んでいるというレポートが入ることがある。一部コンタクトしないという航空機が存在すると危険度が増す。
このあたりを飛ぶ航空機はみんなコンタクトすることで、他機もその情報をモニターでき、視認がしやすくなる。

対空業務を実施することで安全業務に寄与したい。
公共用へリポートとして給油体制を確立したいと取り組んでいる。
ご意見があれば電話でもFAXでも良いのでお寄せいただきたい。


「TCASの運用について」
 学校法人ヒラタ学園 植野廣園操縦教官

アメリカは「人間はミスをするものだ。そのミスを機械でカバーしよう」という発想。その機械の1つがTCAS、Traffic alert and Collision Avoidance System、空中衝突防止装置である。
TCASは、トランスポンダーモードS等を利用し、機内のコンピューター同士でやりとりをし、「お前は下がれ、俺は上がる」と回避方向を決める(回避指示は水平ではなく上下)。
地上の管制とは全く独立した物。
TCASⅠは、18~25NM以内の航空機の位置関係が画面上に表示され、危険度により黄色や赤色で表示される。高度差も判る。他機との高度差1200FT以内で、衝突20秒から48秒前になるとTA(Traffic Advisory)を出し、「トラフィック、トラフィック」と音が出る。TAが出るとパイロットは視認に努める。
TCASⅡは、第2世代、現代のTCASで、他機との高度差1000FT以内で、衝突20秒から48秒前になるとTA(Traffic Advisory)を出し、「トラフィック、トラフィック」と音が出る。TAが出るとパイロットは視認に努める。さらに衝突15~35秒前にRA(Resolution Advisory・回避指示)を出し、「クライム、クライム」または「ディセンド、ディセンド」と音が出て、上昇率・降下率も指示される。パイロットはいかなる場合もRAに従い、2.5秒以内に0.5G、1秒1度のピッチレート(離陸のピッチアップの要領)で操舵し、+8度のピッチで上昇または-5度のピッチで降下させる。
TCASⅢは、次世代のTCASで、上昇・降下に加え、左旋回・右旋回の指示も出す。
19席以上、5.7t以上の航空機にはTCASⅡを搭載する義務があるが、小型機には装備の義務がない。そのためエアライン機と小型機(TCASⅠもしくはモードA・C搭載)が接近した場合、エアライン機にしかRAがでず、エアライン機のみが回避行動をとる。片方の機体にしかTCASが付いていなければ安全の確立が5割に減る。
アメリカにはスカイウォッチというシステムがあり、全部の飛行機の位置が機内の画面に表示される。G1000には組み込まれており、日本もそういう時代がやってくるのではないだろうか。
八尾付近の大阪PCAのフロアーが2000FTから3000FTに上がり、八尾関連機と3500FTで飛行している大阪空港到着機との間でのRA事例が増えた。八尾から離陸した航空機が2600FTまで上がり、上昇率が500FPM以上あると、3500FTで飛行中のエアライン機のTCAS RAが必ず鳴る。PCAを2500FTまで下げたらどうかという話しが出ていると聞く。(注釈:敵(TCASがどういう時に鳴るのか)を知って、私達がどういう運航をすべきか考えて欲しい。)
GA機はTCAからレーダーアドバイザリーを受けて、積極的に情報(インテンション)を伝えることが大切。



「関西ターミナル管制業務の概要」
関西空港事務所 水本亮一主幹航空管制官
関西空港事務所 佐藤亜由実管制官

管制官は約120人。女性は2~3割。
関西進入管制区を9つのセクターに分けている。TCA席を加えると10席の運用卓がある。
来年6月に高知を統合予定。その約1年後には高松を統合予定。
約2年前からARTS-Fという最新式フルデジタルのレーダーを使用している。トランスポンダーランスポンダーがないとレーダーアドバイザリーは難しい。
小型機とIFR機がマージングする場所。 到着機関係:明石海峡付近、神戸空港上空から関西RWY24への経路の大阪湾、関西RWY06の友ヶ島、OHDAIから大阪への経路、六甲からの大阪RWY32への経路他。 出発機関係:大阪の西行き経路、東行き経路のうち低高度の領域他。

[TCASについて]
TCAS RAが発生すると、パイロットは管制機関にRA発生と回避措置の内容を通報する(パイロットが通報しないと管制官はRAが発生していることを知り得ない)。回避終了したら速やかに指示高度に復帰する。
TCAS RAに従って飛行中は管制指示は出されず、回避操作により影響を受ける他の航空機との管制間隔について責任を有しない。
管制間隔を設定していてもTCASのロジック上、RAが発生するケースがある。

PCAは管制機関から許可された場合を除いてVFRでは飛行できない。
神戸空港開港前は、八尾管制圏のすぐ上に大阪PCAがあったが、緩衝ゾーンがないのは不便という意見をふまえて緩衝ゾーンができた。小型機等がそこを飛行する場合、高度によっては3500FTで飛行している大阪到着機にTCAS RAが発生する。そのことについて昨年注意喚起を行い、八尾空港関連のRA事例は減っている。しかしRA事例が頻発すれば、緩衝ゾーン見直しも考えられる。
通信設定をしていなくても、トランスポンダーを作動していればレーダーでIFR機に情報提供できるし、TCASに自機の存在を知らせることもできる。
ARTSには異常接近警報監視機能があるが、TCASとは連動していない。
ARTSには最低安全高度警報監視機能があるが、GPWSとは連動していない。
航空法111条の4の規定により、航空運送事業者はTCAS RAを報告する義務がある。また法111条の5の規定により、局はそれらの報告をまとめ毎年公表している。

[TCAアドバイザリーについて]
プラン18項にTCA/RJBB○○○○(TCA進入予定時刻)を入力しておくと、TCA席にTCA進入予定時刻、型式、目的地、型式、DBC等が記入された運航票が配布され、スムーズにTCAアドバイザリーを開始することができる。
交信は日本語でも英語でも良い。
TCAアドバイザリーを要求する時は、まず関西TCAと通信設定を行う。例:”Kansak TCA,JA○○○○”。
TCAが”go ahead”と言ったら、航空機の型式・現在位置・高度・飛行方向又は経路を通報する。例:”JA○○○○、Cessna172、7NM W of YAO,1200ft VFR,west bound,request TCA advisory.” (注釈:この時に具体的要求まで長々と伝えるパイロットがいますが、それを伝えるのはレーダーコンタクトされた後にした方が良いでしょう)
レーダーコンタクトされたらTCAアドバイザリーが始まるので、具体的要求を簡単明瞭に伝える。
地名を言われたても分からない管制官もいる。例えば「大阪空港の何マイル東」という言い方ならすぐ分かる。
高度・針路を変更する場合は必ず伝えてから(予告なしの高度・針路変更は即応できない)。

平均2000機/月、忙しいと1時間40機取り扱うこともある。
しゃべっている管制官が行う調整業務も多い。
TCAが忙しい場合、アプローチやディパーチャーに振り分けて、レーダーモニターを実施するケースがある。
レーダー覆域と管制官の助言は100%ではない(電波の特性上映らない空域がある。繁忙期は1機だけを監視することはできない)。状況によっては情報が遅れや欠落が発生する。
より良いサービスを提供しようとがんばっている。

[飛行要望書の記入方法について]
飛行要望書は実施当日にFAXで提出を。有効期限は1日のみ。
例えばMSN No.115-2のように”-2”をつけるのは止めましょう(要望書を探しにくい。No.が足りない場合は管制事務室へ連絡すれば追加で割り当てます)。
機番は当日使用するもののみを記入し、たくさん書かない。
目印になる物が何もない地図は困る。レーダー上で参考できる物、例えば空港等を入れた地図を。
FAXで送信された地図がかすれていると、無線での確認が多くなる。簡潔に分かりやすく。

航空測量のような線上飛行の地図は、開始点・終了点を正確に。
他の管制機関と調整している場合は、その番号の記入があると調整に役立つ。
半分に折って使用する。必要事項は下半分におさまるように。


「八尾空港の現状について」
大阪航空局 八尾空港事務所 中本公徳主幹航空管制官

1日平均160機。
昨年の管制情報懇談会でお願いしたランプアウトの際のスポット名の通報、ご協力いただき航空機の動きがよりつかめるようになった。あわせてランプインの時もスポット名通報にご協力いただきたい。
11月18日にFDPの端末が入った。経路が長いと全部表示できないケースがある。IFRのクリアランスを要求する際、クリアランスリミットを確実に通報してください。
13:30頃にRWY C’Kを実施している。TAXII OUTした飛行機はB1で待機してもらっている。
パイロットがタワーに単に「レディ」と通報した場合、その後どうしたいかの確認が必要になる。インテンションを伝えて欲しい。
パイロットがタワーに「レディ。ライトターンディパーチャー」と通報した場合、右旋回でどこ行くのかが気になる。18方角やポイントで通報して欲しい。
パイロットがタワーにレディをコールする際、インターセクションディパーチャーならその旨を通報して欲しい。他機との間隔設定に影響する。
パイロットがタワーに例えば「レディ。インターセクションディパーチャー、ライトターントゥー天王寺」と通報した場合、全部処理でき、交信量の少ない簡素な管制となる。

TA級ヘリコプターがヘリパッドテイクオフを実施したい場合は事前に通報を(黙って実施するケースがあった。他機との間隔の設定に影響する)。
RWY27のストレートアウトディパーチャー、管制官としては浅香に行くのが普通と思っているが、なかには北西に行く人がいた。長居のミッション機や中百舌鳥の北で飛んでいる機体と接近した例もあった。どこで管制圏を離脱するかを18方位か位置で伝えれば行き違いが防止できる。
TGLは1フライトプランで連続最大5回、ブレークをはさみ連続最大5回、計10回まで。
ノースパターンを使う比率も増えてきている。ノースパターンでのTGLは、民間ヘリ自衛隊ヘリの経路と絡む。ノースパターンでTGLしたい時は、リクエストはダウンウインドで。
STOP ON THE RWYのリクエストは早めに、遅くとも後続機がベースに入るまでにして欲しい(STOP ON THE RWYを行うのは朝日航空の機体が多いが、ダウンウインドで情報をもらえている)。
ヘリコプターがRWY27北側のショートダウンウインドから180オートローテーションを実施すると、タワーの屋根に隠れて見えなくなるので遠慮を。
RWY09使用時、訓練でオーバーフィールド経由、北のパターンに入る場合は早く連絡を。自衛隊のヘリやセンターヘリパッドのヘリと絡む。
飛行要望書の地図、TCAチャートをコピーして使用しているケースがある。TCAチャートには大阪への進入経路が記入してあり、要望する経路を勘違いするケースがある。TCAチャートは使って欲しくない。
要望書をFAXで提出した場合、細かい字がつぶれることがある。また届いていないケースもあるので、到着確認を入れてもらう方が確実。
ミッション機は「REQ STAY [場所]」だけでなく、必ず高度も通報してください。
管制圏通過時「王寺to浅香」と言われると、どこを飛ぶのか、場周経路と絡むのかどうかが気になる。
外来機が着陸する場所を勘違いしたケースがある。
TDS(関西のレーダーの情報)は八尾の東側が映りにくい(地形的問題)。
簡素で交信量の少ないボイスを。
12月23日から25日、クリスマスフライト、八尾1時間に45離着陸トラフィックに注意を。


「質疑応答」
パイロット:ドクターヘリではない県防災ヘリが医療ミッションを実施する場合、どのようにコールすべきか。徳島でEMSと言ったら、管制官からEMSという管制用語はないと言われた。またプライオリティーは要求できるか?
関空管制官:EMSという管制用語はない。EMSという言葉にピンこない管制官が多いと思われる。人命救助であればプライオリティーを与える事が可能なので、その旨連絡を。離陸前に連絡をもらえれば、呼び込みがあった時点ですぐ対応できる。具体的に経路・高度・ミッションの内容を通報してもらえば、可能な限り対応したい。

パイロット:オプションアプローチは、管制官にとってどういうイメージ?
八尾管制官:何ら支障ない。ただし後続機が影響を受ける。後続がベースに入る前にリクエストを。

パイロット: 飛行要望書をFAXで提出すると見にくいケースがあるようなので、事前に調整できるものはメールで提出しては?
関空管制官:現在、24時間人がいるレーダールームにFAXが届く形をとっている。紙が出ていればすぐ分かる。到着したことに気付くのはFAXが一番有効。
八尾管制官:最近になってやっとFAXがタワーに付いた。それをさらにメールというところまでは行かない状況。

「ディスカッション 主要ポイントおさらい」
JAPA西日本支部 若谷哲也

八尾を離陸して南東方向に上昇する場合、伊丹への進入機のTCAS RAを鳴らさないためには、上昇を何フィートでストップするべきか? TCASのロジックを考えると、どんなに高くても進入機の1000FT下、つまりどんなに高くても2500FTでストップするべきである。


前年度のダイジェストはこちら


岡南フライトサービスに変更・大分AVGAS廃止

岡南飛行場における航空交通業務用通信施設のコールサインが、今日より変更になりました。
変更前:岡南エアーサービス
変更後:岡南フライトサービス
(WEF:0000JST 16 DEC 2010)

大分空港でのAVGAS給油取り扱いが廃止され、今日からは給油できません。

岡南飛行場、大分空港へ飛行の際はご注意ください。